ゆっくりと滲み出すちゃんの瞳が、悲しいと喚いてるくせに、当のちゃんは必死に涙を我慢しているようだった。 あんなに泣いたのに、まだまだ出てくる涙。 純情で優しい子何だな、と思う。 「苦しかったね」 ついて出た言葉と一緒に、髪をすくように頭を撫でてあげれば、緊張の糸が切れたみたいにちゃんの涙が零れた。 胸を突くような嗚咽。 よしよし、と小さな肩を抱き寄せてあげればちゃんの体は簡単に俺の胸の中に納まった。 飛んでくる嫉妬の視線は痛いけど、俺様はそんなこと気にせずにちゃんの涙を隠してあげる。 その内気を使ったのか、政宗が幸村を連れて部屋を出た。 ちゃんは一向に気付かない。 部屋を出る間際に、幸村がひどく心配そうな瞳でこっちを見ていた。 大丈夫だよ、と音を立てずに唇を動かせば、幸村も小さな声で「任せるぞ!」と言って部屋を出る。知らない間に男がましちゃって。 パタンと閉じたドアを合図に、俺様はそっとちゃんの背中を撫でる。 「ちゃん。がんばったね。親に自分の言葉を伝えることは、本当に難しくて、勇気がいることだよ。自分のしたいことをするのは、本当に大変で辛いことだ。ちゃんがんばったね。俺様嬉しいよ」 「う、れし・・・?」 「うん。ちゃんは辛くなるほど頑張れた。俺様たちがその力添えできたって思えたから。今こうして、ちゃんを慰められるから」 「・・・」 「ちゃんが自分の気持ちを言葉に出来るチャンスを、守って上げられて本当によかったって思う」 「さ、す、け・・・さ」 「親が絶対正しいことなんてないんだ。ちゃんはちゃんが思うように、ちゃんの人生を生きてもいいんだよ」 「・・・は、い・・・」 ぐずぐずと鼻を鳴らし、小さく返事したちゃん。 よろしいとばかりにまた髪を撫でれば、ちゃんの泣き声が部屋に溢れていった。 俺様にはもう親がいない。 いうなれば天涯孤独だった。 元親に拾われて、幸村や政宗の世話をしてたけど、やっぱりそれぞれがそれぞれの世界を抱えている。 俺様にとって、親との確執と言うのは未知の領域だった。 こんな風に親に縛られたり、対立したり、それは俺が一生味わえないものだ。 少しだけ、ちゃんが羨ましかった。 そんな彼女に、兄のように接することで、俺は間接的に親との確執を体感したかったのかもしれない。 ひどい話だ。 でも、それでも。 今俺様がこうして、慰めてあげるちゃんに対する愛しい気持ちは、本物の家族に対するような気持ちと同じだった。 これだけは、変えられない俺様の本当の気持ちなんだよ。 |