の泣き声を聞きながら、正直俺は、死ぬほど申し訳ない気持ちになった。 女の涙は苦手だ。どうしようもなく俺を加害者にするみたいで、どうにも苦手だ。 佐助の腕の中で泣き疲れ、すんすんと鼻を鳴らす。 それでも、俺は自分がしたことに間違いはないといいたかった。 自分の人生、好きに生きるのは当たり前だ。幾ら親だろうぞ子供の人生をいつまでも握っていいわけじゃあねぇ。 親離れ子離れ、誰しも巣立つことは当たり前だ。 ただは、どうしようもなくなって逃げ出したのだ。 すべてが突然だった。 家に残された両親や家族はどう思う?心配しないはずがない。 ましてやは年頃の女だ。なにが起きてもおかしくないのだから、親の気持ちは想像に容易い。 ことはどうあれ、連絡は早い方が懸命だ。俺はほとんど無理やり、に家に連絡を入れさせた。 けど、それがを追い詰めたのは事実だった。 「元親」 「あ?」 「ちゃん寝そう。部屋まで連れてったげて」 「おめぇが連れて行けよぅ」 「俺様食器洗いが残ってるの!」 パチン、と寄越されウィンク。 変な気を遣われたものだ。やれやれと溜息をつきながら、泣き疲れて目を瞬かせるの片を揺すった。 「、部屋、行くぞ」 「・・・はい」 眠たげな瞳だとろんとしている。涙に濡れて赤くなった目尻。 佐助に後で濡れタオルな、と付け足して覚束ない足取りのを支えながら俺は部屋を出て行った。 「甘酸っぱいねぇ」 背後に響いた佐助の独り言は、とりあえず聞こえないことにしておこう。 物置みたいになっていた部屋を急遽掃除して、人一人が活動できるスペースを作った部屋にはありあわせの薄いせんべい布団がしかれている。 小さな子供みたいに今すぐ寝そうなを布団に寝かせ、出ていこうにも赤くなった目のに罪悪感ばかりが浮かんだ。 「元親さん」 小さなの声にはっと顔を上げる。 眠たげに布団に顔を埋めた驚くほど優しい声で俺を呼んだ。 「元親さん、ありがとうございます」 「なんで・・・ありがとうなんだよ」 泣かせたのは自分だ。慰めたのは佐助だ。 お門違いの礼だと思うのに、畜生、嬉しいとか思ってやがる。 「私・・・元親さんに会えて、幸せものです。居てもいいって・・・言って・・・くれて・・・好きにして、いい・・・って・・・」 眠気にまどろむ言葉は切れ切れで小さい。 それなのに、人の心臓を的確に揺すぶる威力は尋常じゃあねぇな。 「・・・」 「元親さんに・・・会えて・・・本当に・・・嬉しくて・・・だから・・・わたし・・・」 弱くなる言葉尻、ゆっくり閉じられた瞼、落ち着いた呼吸。 寝たのか?と言う問いかけに答えはない。寝たらしい。 「・・・続き・・・気になるじゃねけぇかよ」 思わずがっくりと肩を落とすが、安心しきった寝顔に文句も引っ込む。 なんかもう、いっか。 「あー・・・その、な。うん」 ガシガシと頭を掻く。 相手は寝てるから気兼ねする必要はないけどよぉ。 「お前さ、十分がんばったからよ。ここでは気兼ねしなくてもいいんだぜ?あー・・・うん。俺はお前の味方だし、力になってやる。だから、いつまでもここにいいからな。お前の気が済むまで、居ればいいぜ」 すやすやと眠るの髪をくシャリと撫でる。 すっかり寝入ってるは起きる気配もなく、猫みたいに掌に擦り寄って満足したみたいだった。 「・・・俺も寝るか」 いつまでも寝顔を見ているのも変態臭い。 の部屋から退散すれば、廊下で待ち構えていた佐助と目が合った。 「元親ぁ、それ起きてる時に言わなきゃ意味なくなぁ〜い?」 「・・・うるせー」 ああ畜生。 いつの間にこんな風に取り繕うことが下手になったのか。 知らない間に、少女にかき乱されているのを自覚する。 でも、それも悪くないと思っちまう。 どうにもこれは、重症かも知れねぇ。 |