「でな、やっぱ俺は思うわけよ。ここらで一発連絡入れたほうがいいだろ」

言った瞬間のの顔はもうなんと言えなかった。
おめぇ、可愛い顔してんだからそんなみっともねぇ顔すんなよ・・・

「なにちゃん。自分地の番号も忘れたの?おばかさんだねぇ」
「Hum、救い難い鳥頭だな」
「政宗殿、殿は鳥ではござらん」
「ちっがいます!!」

ばん、と強殴られた机の上の、4つの小さめの硝子ボールが震えた。
食後のデザートの後の些細な団欒を壊したのは、他ならない俺だった。

「あのな、は嫌かもしんねぇけど探すだろ、親は。警察とかに連絡すんだろ?そしたら俺らは犯罪者だ」
「え!?」
「未成年略取?だったか?うちも店の店長が言っててよぅ・・・」

流石に犯罪者に見られるのは顔だけで十分だ。
名実共に犯罪者扱いされてしまっては立つ瀬がねぇ。いや、元からこの家の中じゃねえけどな。

「あーたしかにちゃんギリ未成年だもね」
「み、成年、で、す、が、」

また固まった顔になるに、どうしたもんかねぇと溜息が零れた。
言いたくはないが、言うしかねぇよな。俺は一つ溜息をついてから、しっかりとの目を見た。

「あのな、どんな親でもガキは心配なんだよ。どんな馬鹿なガキでも親は心配なんだよ。帰りたくねぇ気持ちはよくわかる。でもな、無意味に心配かけるのはよくねぇ。心配して欲しくても、もう誰もいないやつだっているんだ」

言い切った瞬間、が息を飲むのがわかった。
佐助は、一瞬だけ眉を動かしだけで何も言わなかった。
幸村は変わらず不思議そうな顔をするだけで、政宗は目を細めるだけにしていた。

「お前は家族がいる。心配してくれる家族がいる。お前は嫌いかもしれない、会いたくないかもしれない。けど、家族なんだ。お前の、家族だ」

細い肩を捕まえて揺さぶる。
ぐらぐらとゆれちまうほど細い体だ。小さな女だ。親が心配しないはずがない。
ケータイも持たないで飛び出して、事件に巻き込まれたとかそんな風に心配しているに違いない。
俺はの腕を引っつかみ、そのまま部屋を出て電話代の前に立たせる。
携帯ばっかり使われるから、埃をかぶった受話器を持ち上げ軽くタオルで拭いてから押し付けた。

「電話、しろ」

耐えるように握り締められた受話器が、揺れていた。