「いちいち泣いてんじゃねーよ」

鼻で笑ってやればほんのり赤まった目で睨まれた。
怖くもなんともねぇけど?

「こらー、政宗、女の子には優しくしないとだめでしょー?」
「ダメでござる!」

オカンとガキのコンボにゃあ勝てないことはわかっているのであえて視界にいれずだけを見ていた。
財布一つで家を飛び出した割には小心でよく泣くかと思えば俺を睨んできたり。
アンバランスな存在に思わず笑みが溢れた。

「家がなんだか知らねーが。ここにいる間くらい忘れりゃいーだろ。逃げ出したかったんだろ?なら引きずるな。笑ってろ」

ぐい、と無理矢理ほっぺたを両方から引っ張った。
あんまりにも柔らかいそれは餅みたいで、そのまま感想を言えばに「ばか!」と罵られた。

「あんまぐずぐず泣いてんな。飯がまずくなる。You see?」
「わかりました!でもほっぺた引っ張る必要はなかったと思うんだけど!?」
「ノリだよ。ノリ」

にっ、と歯を見せて笑えばもつられて笑っていた。

「お前ら仲いーなー」

エビフライの尻尾までバリバリと食っていた元親も楽しそうに目じりを下げている。
なんだか家族みたいだと思うと笑えた。
こんな暖かい、家族の憧憬。妄想の中の産物。存在するこの仮初の食卓が、心を包むのを感じる。
きっともそう感じているんだろう。
俺とこいつはよく似ている。そう思っていたから。
元親は笑ったまま、職人とは思えない無骨ででかい手を俺との頭に勢いよく乗せた。

「のぁっ!?」
「きゃっ!?」
「ほんと姉弟みてーだぜ?お前ら。喧嘩するほど仲がいい!ってな」

そのままわっしわっしとかき回すみたいに撫でまわす。
俺はともかく、小柄なの首は元親に振り回されて今にももげそうなのは気のせいか?


「は、はい」

急にぴたっと動きが止まる。
俺とと、幸村と佐助の目線は元親に注がれた。

「泣きてぇなら泣いてもいい。けどよぉ。間違っても一人で泣くなよ?ここには俺も佐助も政宗もいる」
「俺もいる!」

びし!と右手を突き上げた幸村を全員で微笑ましく頭を撫で、元親が続ける。

「辛いなら泣け、たっくさん泣きゃあ、最後は幸せに笑えんだからよ」

な、と歯を見せて笑う元親にが緩やかに目じりを下げた。

「は、い・・・」

その笑顔につられて、元親に続き佐助や幸村も笑顔を作る。
まったくどいつもこいつも、デレた顔しやがって。
そんなこと考えながら結局俺もまた元親のようにの頭を撫でていた。
俯いて小さく鼻を鳴らす

「You should cry a lot.」(たくさん泣きゃあいい)

ぽんぽん、と緩い調子で頭を撫でればいよいよ緩みきったの大きな目から涙が溢れた。

まったく、従順過ぎて困るぜこいつ。