「うっわ!うまそー!!」

エビフライなんてどんんだけぶりだろ!?
仕事でまだ名前が売れてなかった頃はよく安くて手の込んだ料理を作っていたが、最近はそうもいかなかったことを思い出す。
幸村は嬉しそうに次から次へとエビを食い散らかしていた。
・・・うん、まぁ成長期だもんね。でも俺様のは?

「あ、佐助さんの分よけてありますよ」

俺様の微妙な眼差しに気付いたのか、ちゃんが急いで俺様に声をかけてくれる。
うーん気配り上手だねぇ。
ありがとう、といいながら席につけば、ちゃんは照れたように笑った。

「照れちゃってかーわい」
「て、照れてません!」
「顔赤いよ?」
「熱いからです!」
「照れてるからじゃねぇの?」

意地悪く笑う政宗にちゃんがきっと目を吊り上げた。
まだ1日2日しか一緒にいないのに、まるで本物の姉弟みたいだ。

「ありがとうって、なんだか久しぶりに聞いたような気がしたから・・・」

小さな声は、ぶつかり合う食器や箸の合間に静かに響いた。
たくさん家族がいて、みんなが忙しくて、やらなきゃやらないことは山済みで、でもみんな忙しくて。
相手を思ってしたことも、ごく当たり前のように捉えられて。
行動の全てが日常に変えられて、それから外れれば弾劾されて。
感謝されたい訳ではなかったはずだが、だからといって責められるいわれもない。
口にするのは憚られる行き場のない感情は渦巻いて、そうして彼女は逃げ出したのだ。

ちゃん」

はっとした瞳があった。

空気を悪くしたんじゃないかって、泣き出しそうな瞳だ。

「ありがとうね」
「佐助、さん・・・」
「ありがと」

感謝を連ねれば、ちゃんは困ったように笑う。
目じりがうっすら光ってた。