「む、長曾我部、今日は早いのだな」
「あー、ちょっと立て込んでてな。まぁ仕込みは終わらしてあっから大丈夫だぜ」

店主の長政に親指突き立てればならばいい、と硬い返事が帰ってきた。
店のラストオーダーは午後6時。
そのあと7時までしか店は開いてない。浅井夫婦に任せても平気だ。

俺は短く挨拶して近所の工具店でいろいろ買って家路に急ぐ。

「帰ったぞー」
「元親殿!おかえりでござる!!」

毎日の習慣である幸村のタックルを受けた後、政宗が続くかと思えばか細い声が耳に響いた。の声だ。

「あ、元親さん、おかえりなさい」

シックな黒のエプロンを身に付けたが台所からひょこりと顔を出す。
成人男性用のエプロンはがばがばで、着られてる感が否めない。

「どーしたぁ?それ」
「政宗さんのです」
殿がエビフライ作ってくれるんでござる!!」

目をキラキラさせた幸村とニヤニヤ笑う政宗。
当番オメーだろ。
文句を込めて睨めば、政宗は飄々と何時ものように笑っていた。

「いいじゃねぇか、本人がやるってんだよ」

目線の意味に気づいた政宗はソファにごろりと寝転んびチャンネルを変える。
相変わらずの暴君ぶり溜息を吐けば、は焦ったように俺と政宗を見比べ小さく笑みを作った。

「居候ですから」

柔らかく笑うになんだかなぁ、ともやもやしてれば、幸村に土産の催促をされた。
悪いけど今日はねぇよ。といえばあからさまにガッカリされた。流石にあからさま過ぎて若干凹むのは俺だけの秘密だ。

「幸村くん。おっきいエビフライ上げるから元気出して?」
「元気だすでござる!!」

姉弟みたいな母子みたいなやり取りに思わず顔がにやけちまう。
知らない間に幸村はずいぶんとに懐いたみたいだった。

「きめぇよ元親ぁ」
「うっせー」

俺はキッチンで笑いあう幸村との後姿を見詰めながら、こんなのも悪くないと思う。
しばらくぼんやりとそれを見詰めた後、俺は一度瞼を落とす。

元親さん、おかえりなさい

優しく、心地よい響きだった。