「だぁーかぁーらぁー!こっちの黒でいいってんだろ!?」
「やですよそんなの!!つーか中まで入ってこないで!政宗さん恥ずかしくないの!?」
「It is shameful(恥ずかしい?).んな訳ねーだろ。なら元親の希望の白にするか?」
「どっちも嫌ぁ!」

先ほどから政宗殿と殿いい居合いが耐えない。 というか・・・
政宗殿は何故女性の下着売り場についていけるのだ!?
お、俺は・・・俺は・・・!!
両手で顔を覆って頭を振ってしまう。
恥ずかしすぎて死んでしまいそうだ! ああ、早く終わってくれ!!

会計を済ませて店から出てきた政宗殿の晴れやかな顔といったら。
佐助がよく言っておったものだ。
「政宗は真性ドS」、と。

「幸村くーん!!」
「ど、どうされた殿」
「聞いてよ政宗さんって酷いんだよ!?
試着しようとしたら試着室の中まで着いてこようとしたんだけどどう思う!?」
「な!!政宗殿!?」
「いいじゃねーか減るもんじゃないし」
「気分的に減りますよ!!」
「Oh!Sorry」
「ムカツク・・・!」
「お、落ち着いてくだされ、次は服を買うんでござろう?」

小さく進言すれば殿はそうだね、と笑って俺の腕を引いて歩き出していた。

「ぅ、わ・・・!」
「あ!ご、ごめん・・・」

吃驚したのは俺だが殿も同じようで。

「なに赤くなってんだこのCherryが」

政宗殿にどつかれた(後頭部だぞ!?)

「政宗さん!幸村くんがかわいそうですよ!!」
「いいんだよスキンシップだから」
「どこがだ!?」

明らかいつもの倍は力が入って他でござる!!

痛む頭をさすりながら、政宗殿が先導を歩き、俺たちはその後に続いた。

「私ね、下の兄弟がいなくて。下の兄弟ってすっごい憧れてたの。でもできたのは甥っ子ばっかりだからさ、なんか、年下の子への接し方がちょっと感覚ずれてて、ごめんね?」

申し訳なさそうに、それでもはにかんで笑う殿。

「・・・あ、べ、別に大丈夫でござる。それに、俺でよければ、弟と思ってくれても構いませぬ!」

殿の俺を見る目は兄に似ていた。
俺には兄がいた。
優しい、人だった。

「・・・そっかぁ。幸村くんは優しいね。ありがとう」

柔らかく笑う殿に、俺は、居なくなった兄の笑顔を重ねたのかもしれない。
心臓のあたりが痛くなって、殿の手をそっと取った。
俺とそう変わらないような、小さな手だと思う。

「幸村くん?」

殿は首をかしげる。
そうして、優しく俺の手を握り返してくれた。

「帰りに、甘いもの食べて帰ろうね」

殿の言葉は兄に似ていた。母にも似ていた。
ただ無性に、掌から伝う熱が苦しかった。