「佐助ぇ!!俺の弁当はどこだ!?」
「ちゃんとテーブルに置いてあるでしょー」
「あった!すまぬな佐助!」
「うるせーぞ幸村ぁ、朝くらい静かにしろ」
「政宗殿が静かすぎるんでござる。というか、そんなにゆっくりしてて大丈夫なんでござるか?」
「バイクだから平気なんだよ」
「平気じゃないでしょ!!朝込むんだからとっとと仕度して!!」
「I see mommy.」
「キモイ!!ほら幸村ものんびりないの」

・・・う、うるさ・・・い・・・

「?」

ああ朝からなに騒いでるんだろう?
母さんと姉さん?いい加減毎朝声張り上げて言い合いみたいな会話するのやめてよ。
頭が痛い。もうヤダ。静かにしてってば。

「・・・もし?」

だれかがあたしの頭をぐりぐりする。
頭痛いってんだろーが。どっち?
兄さんの子供?姉さんの子供?

「・・・どっちでもいーからほっといて、頭痛いの」

ぺし、と冷たく平手であしらって、あたしはそのまま布団の中にもぐりこむ。
しかしいつもよりふかふか具合がショボイ。
なんだろう。まぁいいや。
頭痛いし。風邪かな。仕事どうしよう。サボっちゃってもいいよね。そうだよ。サボろう。有給、たくさん残ってるもん。

「幸村!!早く!」
「今行く!!」

耳元で張り上げられた声にいまいち聞き覚えがなかったんだけどもうどうでもいい。
もう少し眠ろう。
寝てれば頭痛も引くだろうし。
うん、そうしよう。

「じゃー政宗、俺様たち先行くからね。戸締りはー」
「今日は元親が最後だ」
「あそ、バイク気をつけてねー」
「政宗殿ぉ!いってまいる!!」
「おう、気張ってこい」

バッタンバタバタ。
寝れない。うるさい。頭痛いって言ってるでしょ?
イライラと同時にガンガンと頭が響く。そのせいで感情も意識もすぐに形がなくなる。

「・・・あんた、あー。ま、いっか」

よどむ意識の向こうで誰かが何かを言ってる。
男の人の声?兄さん、にしてはちょっと低いなぁ・・・

「元親ぁ、先行くからなー」

ドアか何かがゴン、と殴られた音を立てて、次に扉が閉まる音。

静寂。

ああ、やっと深く眠れそう。