「あああああやべぇ!!遅刻だ!!」

まだ意識が沈みきっていない時に上からどたどたばたバタバタ。
頭痛もまだ健在だしいい加減腹が立ってきた。
今度は誰だ!?
勢いよく布団を払って上体を起こす。

・・・?

ここはどこ?

「あ、あんた、やっと起きたのか?」
「あ、え?」
「俺今から出勤なんだわ。しかも遅刻しそう」
「はぁ」
「で、戸締りなんだけど頼まれてくんねぇ?」
「へ!?」
「とりあえず家中の窓閉まってるか確認してもし帰るなら玄関の鍵閉めてくれよな。これ鍵だから、後は玄関の植木鉢の下につっこんどいてくれ」
「え?え?え?」
「じゃ行って来るぜ!」
「あ、い、いってらっしゃい・・・」

バタン!
と音がして男の人が出て行った。
なんとも風変わりな風体だったと思う。
そこらのボクサーにも引けをとらないようなガタイに、不良も真っ青なつんつんの銀髪。
そして左目を覆う眼帯。

今度こそ完全な沈黙が訪れた部屋をナナはゆっくりと見回す。

「・・・だから、ここ、どこ・・・?」

衣類や本、なんかもうとにかくいろんなものが散乱している部屋の真ん中に備えられたソファの上で丸くなる自分。
そして昨日の夜の記憶がない・・・。

ポケットを漁ると財布がない。
つまりとりあえず帰れない(帰る気なんてないけど)
とにかく話を聞かなくてはならない状況であの人は出て行ってしまった。
どうしよう?
どうすればいい?

昨日の自分は随分大胆(もしくは慎重)に家を飛び出したものだ。
今じゃもう何をどうすればいいのかわからない。
とりあえず仕事先に休むように電話を・・・
そこまで考えて携帯電話を持っていないことを思い出し。

「そうだ、置いてきたんだっけ」

ずきずきと頭が痛む。
もうどうでもいい。
寝る。寝てやる。

あたしは重い体を持ち上げてひとまず玄関の鍵をかけた。
外に出るわけにも行かず鍵は持ったまま部屋に戻る。
そうして勢いよく布団をかぶり、小さすぎず大きすぎないソファに身を預けた。






瞼を落とせば夜に同じ