最近戦ばっかりだよまったく。佐助様が給料低いってぼやくのわかった気がする。
ああもう肩凝った。足疲れた。のんびりしたいよ。
もー温泉行きたいなー温泉。
そうだ、この戦終わったら有給つかって温泉行こう。
おいしいお酒飲んであったかいご飯と景色のきれいな露天風呂に浸かろう。

「ちょっとー、戦の準備中は無駄口厳禁だよ?」
「あ、佐助様。口に出てました?」

音もなく私の隣に現れた佐助様は軽く私の頭を小突いた。
力が入ってなくても鋼の篭手が痛いです。

「ね、佐助様。戦が終わったら花見に行きません?」
「花見?」
「そうです。私がお弁当作りますから、佐助様はお団子をお願いします。それで幸村様やみんなと一緒に甲斐の絶景を巡りませんか?」
「いいねーそれ。旦那も喜ぶよ」

からからと佐助様は笑い、目じりを下げる。
珍しい表情だ。
佐助様らしくない。

「お館様の分も楽しみましょう?おいしいお酒の肴は甲斐の花。きっと羨ましがって帰ってきちゃいますよ」
「そうだねー」

そうだったらどれだけいいんだろうね

そうして佐助様が笑った。
ああ、この人は気づいてるんだ。

「佐助!!もうすぐ出陣であるぞ!何を話し込んでおるのだ?」
「あ、幸村様。あのですね、この戦が終わったら、皆で花見に行こうという話しです」

花見か、
幸村様がそう反芻して、にっこりと笑った。

「なれば、には弁当係を、佐助には団子係りを任じよう!」

今しがたの計画通り、幸村様はそう行って笑う。

「旦那、俺様忍なんですけどー?」
も忍だが飯を作ってくれるぞ?」
「ねぇ幸村様。佐助様もわがまま言わないで団子くらい作ってくださいよー」
「やれやれ」

3人で小さく笑いあえば、伝令役が駆けつけ私たちの前に膝をついた。

「幸村様!伝令にございます!敵軍、進軍中。その数・・・5万っ」
「・・・あいわかった。皆に伝えよ、こちらも迎え撃つ」

途端鋭さを増した眸に、伝令役は深々と頭を下げてさがっていった。


「わかっております」

佐助様の言葉にすぐさま頷く。
この戦、真田軍が圧倒的に不利。
それを覆すには、忍が前線で撹乱と頭数を減らさなければならない。
危険度の高い任務だ。
佐助様はそれ以上何も言わず、私を視線から外す。

「・・・、某は」
「幸村様」

言葉を遮るのは不敬だが、幸村様は咎める事はなく繭尻を下げた。
情けない表情だが数刻後には紅蓮の鬼の顔になるのだろう。

「何も仰らないでくださいよ。真田忍者隊を舐めないでくださいませ。この、見事任務を全うしてみせますゆえ」
「・・・うむ。よろしく頼んだぞ」

そうして私は地面を蹴り上げた。
佐助様ほどの才ないが、真田忍者隊副長の名は伊達ではない。
及ばすながら尽力しよう。
私は地を駆ける。
憎き敵はお館様の仇。
これは幸村様の雪辱戦。
負けられぬ。敗けられぬはずがない。
私は手に馴染む愛用のくないを握る。
後ろに控えている忍隊。
佐助様は幸村様の傍に。

ああ、あの方は気づいている。

この日、真田は滅ぶだろうことを。


「真田忍者隊副長、。忍び参る」


それでも私は戦う。
負ける気などないから。

恐れなど抱かず私は死地に飛び込む。
甲冑を来た猛者共の波へ。
一つでも多くの命を刈り取るために、私達は武器を振り下ろした。

戦況は不利。

一つ、また一つと消えていく気配を感じながら、私は敵陣の中心で踊る。
命を喰らう、死の舞踊を。






爆ぜる爆音が、開戦の合図となった