っ・・・っ・・・く・・・ぅあ・・・っ」

兄は、綺麗な人だと思う。
容姿もそうだけれども、優しくて、純粋で、強くて、素直で。
いい所を上げたらキリがない。欠点がないわけじゃない。でも、兄は出来た人間だ。

「はっ・・・うぁ・・・あ・・・」

5つ年の離れた兄を、私は尊敬していたし家族としても好きだし、兄の様な人間になりたいと常日頃思っていた。
兄は、美しい人間だ。

「はっ・・・・・・っふ・・・」

その兄が、自慰をしている。
自分の部屋で、私の下着の匂いを嗅ぎながら。
右手で荒く自身を擦っている。
私は兄のそんな姿さえ綺麗だと思う。
兄はマラソンの後のように息を乱し、ベットの上で前かがみに身を丸めている。苦しげな表情に私の胸から切ない吐息が零れた。

「お兄ちゃん・・・」

私は意を決して兄の部屋に踏み入った。
私に気付いていなかった兄は勿論狼狽し、急いで左手で鼻先に押しつけていた下着を隠した。
代わりに下の息子は丸見えだ。

「何してたの?お兄ちゃん」
「っ!ノックくらいせぬか!!」
「ノックしたよ?お兄ちゃんが気が付かなかっただけでしょ?」

なんて嘘。
しかし兄は美しい人間だ。純朴で、疑うことを知らない。
私がノックをしたと信じ込み、それに気付かず自慰をしていたのがよっぽど恥ずかしかったのか、茹でダコのように真っ赤な顔を伏せて急いで布団で下半身を隠した。

「ねぇ、幸村お兄ちゃん・・・なに、してたの?」
「そ・・・その・・・おなごが知るべきことではないっ・・・!」
「私のパンツで、なにしてたの?」

私は死刑執行人のように兄のベットに近づく。
後ろの窓は二階だ、逃げ場はない。

「・・・お兄ちゃんの、ヘンタイ」

私はそう笑って兄のベッドにのし上がった。
固まって動けない兄の顔色は悪い。
私は布団をひったくり、兄の固く反り上がったそれを両手で包んだ。

「っ、!!」
「お兄ちゃん、私のこと好きなの?」
「・・・っ!!」
「ねぇ、答えて」

脈打つ一物はぬるりと濡れていた。
男の性器を見るのは初めてだった。思ったよりも恐ろしくないと感じるのは、それが兄のものだからだろうかと私は思う。

「よせ、っ・・・!」

兄はきつく眉を潜め、耐えるように拳を握る。
本当にやめてほしかったら突き飛ばしてよ。怒鳴って、怒って、私の事を嫌いだといって。

「お兄ちゃん。こうすると、気持ちいいの?」
「っ!!」

形に沿って両手を上下に動かせば、兄は息を飲み体を固くした。
拒絶するように顔を隠す。それと同時に。左手に握りこんでいた私の下着をまた鼻先に押し当てた。

「妹のパンツでオナニーするお兄ちゃんの変態。妹の手でオナニーしてもらってるお兄ちゃんの変態」
「やっ・・・めっ・・・、・・・!!」

苦しそうに喘ぐ兄の表情に私は体熱くなるをのを感じた。
兄の痴態に興奮する私も、変態だ。

「お兄ちゃん・・・お兄ちゃんっ・・・」
っ、離せ・・・もうっ!」

兄が一際大きく息を吸う。そうして両手で包んだ兄のものははちきれんばかりに脈動し、そうして私の両手に白い精液を溢れさせた。
ひと肌よりも少し熱い、どろりとした兄の精液を私は迷わず口に運んだ。
甘党の兄のそれは甘いかと思ったけれど、やはりそれは情報通り苦かった。

!!」

兄は顔を真っ赤にして急いでティッシュで私の口元を拭う。
涙目になりながら自分の精液を拭う兄の姿は酷く滑稽だった。

「お兄ちゃん。私のこと好きなの?」
「・・・」
「ねぇ、好きなんでしょ?」
「よさぬか・・・俺たちは。兄妹だ・・・」

そう言って逃げる様に視線を泳がせる兄に私は泣きだしそうになる。
兄は、優しくて、純粋で、強くて、綺麗で、酷い人だ。

「好きだっていってよ!!幸村!!」

私たちの血は、繋がっていはいない。
両親は再婚をして、私たちはお互いの連れ子でしかなかった。
戸籍上が家族だろうと、私たちが想い合うことには何の問題もないはずだ。

「私の事抱いてよっ・・・ゆきむらっ・・・!」

私は、幸村が好き。
いつも私を守って、愛して、優しくしてくれた幸村。
私の世界を作った幸村。
幸村しか見え失くした癖に、どうしてひと思いにあなたのものにしてくれないの?

泣きじゃくる私を抱きしめた幸村からは、汗と、雄の匂いがする。
体の芯がジンと熱くなる。
私は幸村が好き。幸村になら、犯されたっていいのに。
匂い立つ首筋に歯を立てる。
キスマークの付け方なんて知らない。精一杯の所有印。
痛みに呻いた幸村は、それから強く私の背に腕を回し、ゾッとする様な男の声で私の耳元に囁いた。

「後悔は・・・、するなよ」






泣かない恋がしたい


title by シュロ