「旦那?何してんの?」 「・・・はっ!!慢心しておった!!」 日々の日課とする早朝鍛錬を終えた旦那が修練所の出入り口をじっと見詰めて固まっていた。 いつまでたっても朝餉にこないもんだから呼びに来たんだけど。なるほどねぇ。 「旦那、寂しい?」 「? なにがだ?」 あれ、あんた無自覚なの? そりゃあまずいねぇ、と俺様が笑うと旦那はますます不思議そうに眉をしかめただけだった。 「いやあねぇ、自覚がたらないのもいかがなもんかと思ってるわけ」 「自覚?なんのだ?」 うーん、なんて説明すればいいのかねぇ。 こういう時前だの風来坊がいてくれたら楽かもね。 て言うかここまで自覚がない旦那もどうなのよ。 毎朝鍛錬のあと手ぬぐいと団子を持ってきてくれていたちゃん。 あれは雀の涙ほどの給金の中から捻出されていたことを旦那は知らない。 旦那のために毎朝早起きして買いに行っていたことは俺様と女中達しか知らない。 あの光景は旦那の中じゃもう日常で。 傍にちゃんがいるのがごく当たり間になってて。 破廉恥とは叫ばなかったし、旦那がちゃんを見る眼に明らかに恋慕の情があったのは傍から見て丸判り。 つーか旦那も絆されたねぇ。 ある意味直球勝負に出続けたちゃんの勝利かな? 「旦那、春だねぇ・・・」 「もう夏だぞ?佐助」 呆けたか?と続けられた言葉に俺様が手裏剣を投げてしまったのは仕方ないよね! ← |