「幸村ぁぁぁぁぁ!!!」
「お館様ぁぁぁぁぁぁ!!」
「う、恨めしい!!」
「ねぇ、ちゃんそれ本気?」

今まさに目の前で殴り合いが勃発しているわけだが、本気でうらやましい!
あたしだってまだ真田さん呼びなのに呼び捨て!しかも下!!

「あたしも幸村さんって呼びたい!」
「呼べばいいじゃない。好いてるんでしょ?」
「そりゃもう大好きです!でも一回幸村さんvって呼んだら破廉恥!っていわれちゃいました」
「なるほど・・・」

そんな新妻みたいな声だされたらねぇ、と佐助さんが微笑ましそうにほっぺたを掻いていた。
ちなみに佐助さん呼びは敬語使い慣れてない?と見抜かれてしまったからだ。

「ていうか大将もそろそろ殴り愛やめてよ。ちゃんに会いに来たんでしょー?」
「そうなの?」

それは知らなかった。
佐助さんの話ではどうやら異世界から着たあたしを本格的にこの上田城に置くならばやっぱり真田さんの上司である武田信玄様に許可を取ったほうがいいからなんだって!

そんなこんなで信玄様の最後の一撃で真田さんが吹っ飛んだ!ああ!痛そう!!

よ!!」
「はひ!」

いきなり振り向かれて呼ばれたらねぇ。そりゃ驚きます。
大体赤いし(?)ヒョウ柄だし(?)なんか兜もさもさだし(?)

「そなたが異世界から来たという娘か」
「は、はい!このたび真田さんに命を救われまして、今はこの上田城で面倒を見てもらってます!」

縁側で失礼のないようにちゃんと正座する。
けど慣れてないから足が痛いのよ。

「ふむ・・・幸村にもとうとう春が来おったかぁァァ!!」
「ええ!?そんな恥ずかしいっ!」
ちゃん割には嬉しそうだねー」

まだ気絶中の真田さんだから何言っても大丈夫だと思うとやっぱり嬉しくて赤くなってしまう。

「佐助から文で聞きいておる。よ。幸村を憎からず想っておるらしいな」
「憎いも何も大好きです!」
「わお!直球だなねぇ。俺様ビックリ!」
「だって好きなものは好きなんです!乙女のラブパワーは核兵器一個分に相当するのよ!?」
「かくへいきってなに?」
「とにかくすんごい最終兵器よ」

そんなこと言い合ってたらいきなり信玄様が大笑いしだした。

よ!その心意気やよし!!嫌になるまで上田城に住むがよい!おぬしの身柄はこの甲斐の虎が保証しよう!」
「やった!!」
「ちょ、ちゃん不敬だから。もっと敬って」

あたしの不敬な態度もお気に召したのか信玄様はわっさわっさと大きい掌であたしの頭を撫でてくれた。

「それから、幸村を頼むぞ!」
「え・・・?」
「アレもアレで男だからな!今日からは幸村と呼ぶがよい!」
「いいんですか!?」
「うむ!!」
「ありがとうございます!信玄様ー!」

キャーといいながら抱きついた信玄様の体のごついこと。
逞しいお父さんみたいで嬉しくなってしまったよ。

あとから聞いた話によれば、ご両親がもういない幸村さんにとって信玄様はお父さんのようなもの!
つまりこれって、家族公認のお付き合いだよね!!

「佐助さん、いや、お母さんと呼んでも?」
「あはー、怒るよ?ちゃん」

割烹着着てしゃもじ持ってる姿で言われてもなぁ。



03



うむ!



よろしく頼むぞ!