act,9








「ねぇあれなぁに?」
「チョコが貰えずに落ち込んでいる徳川家康だ!!ははははざまあないな徳川家康ぅぅうう!!」
「うるせー三成ぃ!!」

今日は素敵なバレンタイン。
あたしの問いに答えた三成は気が触れたみたいな高笑いをしてそれに怒った家康が缶ジュースを投げる。
プルタブが開いてなくて容量満タンのそれがゴチ、と鈍い音を立てて三成を撃沈させた。

「おかしい・・・こんなはずはねぇ!去年は仕方がなかったっ・・・!わしはチビで周りには元親や伊達がおったから目立たなかった!けど今年はあいつらもいねぇし傍にいたのがあの三成だぞ!?やっと成長期が来てあいつらにも負けねぇくらいの体格になった!!チョコの一つくらいあってもおかしくはねぇだろう!?何故三成にチョコがあってわしにちょおがねぇんだ!!」
「ボディーガードの忠勝さんが怖いからじゃないの?」
「忠勝は怖くねぇ!!あいつは優しいやつだ!!」

あたしの投げた声に家康がすぐに反論する。
ちょっと涙目になってる。かわいい。
確かに去年は伊達先輩とちかべ先輩のおもちゃにされてイケメンの間にはさまれて埋まってたからどうしようもなかったけど今年の家康は違う。
周りがびっくりするくらいの急成長で身長はぐんぐん伸びて筋力もついた。声変わりは済んでいたので声はいつものあの少し高い声のまま。
誰にでも優しい家康は前田先輩ほどとは言わないがみんなに好かれていた。
なのにチョコは一つもない。

「なぁ。どうしてわしはチョコがもらえないんだと思う?」
「それを聞くところがまず駄目なんだと思う」
「・・・」

あ、黙った。
しかも考え込んでる。
昔みたいな子供の顔じゃない、大人っぽくなった家康の顔で考え事する顔とかもう卑怯。
かわいくない。カッコイイ。やばい。見惚れちゃう、なんて、ね。

、はっきり言ってやればいいだろう。貴様のような憎たらしい八方美人のために時間と金を浪費するバカはいないとな!!」
「三成うるさいなぁ」

今度はあたしが三成に物を投げる。
さっきコンビニで買ったチ○ルチョコだ。
上手い具合に角が当たったらしく「うぐっ!?」とか言う呻き声を上げながらも三成は大人しくそれを食べた。
食べてる時だけは大人しいんだよなぁ。
しかし今度は家康の方からすごい視線を感じる。
ぱっと家康の方を見たら拗ねた子供のじと目で家康があたしのほうを見ていた。

「三成にはチョコがあるのか」

・・・!これって、もしかしって嫉妬?それともただの食いしん坊なんてオチ?

「わしにはなくて、三成にはあるんだな・・・そうか」

言って机に顔を埋める家康。
ねぇ答えて?それは嫉妬だって言って?私のチョコが欲しいって、一言でいいから言ってみて?


は、三成が好きなのか・・・」

ねぇ、期待しちゃいそうだよ!!

「いえやす、」
「・・・なんだ」
「すき」

溢れちゃう。気持ちが。言葉が。止まらない。

「家康が好きなの。三成じゃない。チョコ、チロルなんかでいいの?ちゃんと手作り、あるの。家康ように」
「なっ・・・え・・・」
「家康が、好き。ねぇ、あたしのこと、きらい?」

私はズルイから、家康を追い詰める。
チャンスは絶対逃がしたくない。ねぇ、ほら答えて?

「わ、わし、は・・・」

赤くなっていく家康の顔。
立派な青年の顔して、耳まで赤くしてうろたえる顔は、やっぱりかわいい。
家康は、いつまでもあたしの知るかわいい家康だ。

「その・・・のこと・・・」
「あたしのこと?」
「す・・・・き、だ・・・」

赤くした顔で視線を逃がした家康。あたしは思わず嬉しくて涙ぐむ。

「貴様らぁああああ!!教室の真ん中でいちゃつくな!!秀吉様!!秀吉様ぁ!!どうか私にこいつらを斬滅する許可をっ!!」
「「三成うるっさい!!」」

ふたりそろって教科書を投げる。
今度こそ床に倒れた三成をほおって、あたしは家康に手を取る。

「じゃあ、今日からあたし家康の彼女?」
「あ・・・あぁ。うむ・・・そ、そうだな」
「じゃあ、他のチョコ、いらないね?」
「ああ・・・あ?」
「実はね、家康の机と下駄箱とロッカーに家と届いてたチョコはすべて先回りして回収しておきました☆」
「・・・は?」
「あたしの愛のあるチョコがあるからいらないもんね!」
「お、おい・・・・・・」
「家康は、あたしだけを好きでいて、あたしだけのチョコを食べてればいいの」

ね?と笑って家康のあまり柔らかくなくなった頬を指でつつけば、放心しながらも家康はうっすら頬を染めて頷いてくれた。
横暴?いいえ、だってこれがあたしの愛なんだもん!






可愛いあの子と


自家製赤い糸