act,2 2月14日、世の乙女たちが奮闘するバレンタインデー。 甘いチョコの誘惑と少女の微笑み。 『、その、今日はバレンタインなのだが、他の女子のチョコを受け取っても良いのだろうか?』 律儀に送られてきたメールにあたしは腹を立てるどころか感心してしまった。 内緒にしてればいいものを、筋通したいんだなぁと思うと笑えた。 『告白以外なら受け取ってもいいよ!ただ帰りに絶対家によってね!』 それだけ書いて即返信。 幸村はジャニーズ顔のスポーツ万能少年だからもてるのは仕方がない。 だから必死に彼女の座を射止めた私は常人の倍の努力をしなければないことはわかっていた。 だからこそ、私はこの日にあえて学校を休んだのだ。 他の女子に負けないために。 『わかった、風邪は辛くないか?なにか必要なものがあれば買って行くが?』 あぁ!なんて優しい幸村!! あたしの担任への連絡が演技派だったからかもしれないがこんな仮病に心配してくれるなんて! 真面目な幸村なら仮病だと知れば私を叱るだろうが、負けられないのだ、バレンタインデーはっ!! 『ありがとう、気持ちだけで嬉しいし幸村の顔見たらすぐ元気になるよ!待ってるね』 そう返信したら『それでは後で』って来た! 絵文字がなくて堅苦しいけど、絶対行くって感じが伝わる。 ああもう今からドキドキが止まらないっ! そんなこんなで夕暮れ時、カラスが鳴くから帰りましょうと制服姿がまばらに見える。 幸村はまだだろうかと私はどうにも落ち着かない。 ケータイを握りしめながら窓の外とドアを交互に見つめてた。 その時、手の中でケータイが音と一緒に震える! 『もうすぐ着く』 幸村が来る! 髪はオッケー、顔もナチュラルメイク完璧、手のお手入れもできてるし。鏡の前で一回転。露出しすぎない女の子スタイル。うん、大丈夫。 ひとつ大きく深呼吸したら、丁度その時インターホンが鳴る。 幸村だ! 私は急いで玄関の鍵を開ける。 「幸村!いらっしゃい!!」 「?風邪はよいのか?」 しまった。 「う、うん。薬も飲んだしもう平気!」 「平気ではござらんだろう。大人しくしておかねばっ」 優しい幸村! ちょっと強引だけど心配してくれてると思うともう胸一杯!! 「ありがとう幸村!でも私大丈夫だからっ!てかチョコもらわなかったの?」 手ぶらの幸村に首をかしげれ、幸村はいい笑顔で「佐助に先に運ばせたのだ!」と言っちゃった! あの佐助を顎で使うとかやっぱり流石幸村!素敵! 「でもさ、やっぱり幸村、モテるよね・・・」 「しかし、某が好いておるのはけだ。甘味は嬉しいが、彼女らの気持ちには答えてやれぬからな」 やっぱり・・・告白されたんだ。 うううわかっていても腹がたつ。人の男に手を出すなっ!! て思うけど幸村がすごいことさらっというもんだから思わずかお真っ赤にして私は思考停止! 「?」 わたしだけ?わたしだけ! 頭に心臓が来たみたいにドキドキうるさい。 心配になった幸村が私の額に手を当てて「やはり熱が?」と眉を下げて私を見た。 「ち、ちが、ちがうよ。ゆ、幸村、わたし、うれしくて」 わたしが幸村の一番。 幸村の一番がわたし。 嬉しすぎて泣きそうになりながら、私は暖かい気持ちで思いっきり笑った。 「ねぇ、わたしも幸村が大好き。だから、チョコ、受け取ってくれる?」 「無論だ」 間髪いれずに幸村が答えて、わたしは卒倒しそうになりながら幸村をキッチンに誘い込む。 「これ、私からのバレンタインチョコ!」 あんぐりと口を開けてそれを見る幸村。かわいい顔。さすがに驚くか。 幸村はジャニーズ顔のスポーツ万能少年。年下からお姉さんまでライバルは未曾有。 だから私は、このバレンタインを利用してさらに幸村を惹き付ける必要があった。 大の甘党で驚異の大食漢。 そんな幸村の為に一日かけて用意したウェディングケーキ並のバレンタイン特製チョコレートケーキ! 「・・・今日、休んだのは、これの為か?」 お、怒こられるかな? 怒られるかも。 でも恋する乙女は勉強より恋愛、家族より彼氏。 仕方がないじゃない。 控えめにうん、って行ったら、幸村がぶるぶる震えながら私の肩を思いっきり掴んだ。痛い! 「!そなたの心意気に某は感無量だ!某の為にこのようなっ、このような・・・!」 「幸村、」 「うぉぉぉおおおおみ、な、ぎるぁああああ!!!!っ!!!某の嫁になってくれぇえええ!!!」 大の甘党で驚異の大食漢。 そんな幸村を餌付けで近づいたわたしの狙いはまさしく幸村の心を胃袋から射止めること! まんまと思い通りに運んだ展開に、私は幸村に抱き締められながら「もちろん!」と笑って叫んだ。 |