act,2 「それでは皆様、新郎新婦のご入場です!」 照らされるスポットライトと二人を迎える拍手の波。静々と歩くたびに美しいレースのスカートが柔らかく揺れ、二人の幸せいっぱいの横顔に胸が熱くなる思いだった。 「綺麗だねぇ・・・」 「うむ、お二人とも大変お似合いでござるな」 メインの席に到着した二人を見つめながら呟いたに、隣の席の幸村が相槌を打った。 高校時代の友人のめでたい席に、二人は惜しみなく拍手をしつつもその光景から目が離せなない。世界中に祝福されるような光景に、はほうとため息をついた。 「昔は正直言ってあんなに柄の悪かった子が、こんなにウェディングドレスが似合うとはねー」 「殿、そういう言い方は良くないでござろう」 「ごめんごめん、でもほんと綺麗」 いいなーと零すの隣で幸村は「某は白無垢のほうが」とか言い出す始末に、 は肩を揺らしながら「じゃあ自分の式で彼女に着せて挙げなよ」と笑った。 「皆様、それではしばしのご歓談をお楽しみください」 その合図と共にはカメラを持って主役たちの元に向かう。 懐かしい思い出話に花を咲かせて写真を撮れば、ふと花嫁がの腕を引いた。 「ねぇ、幸村君としゃべった?」 「え?うん、しゃべったけど?」 「あんたたち高校の時そんなに仲良くなかったけど、何で席が隣なんだと思う?」 「なんでって、名簿?」 首を傾げれば花嫁は一瞬目を丸くして軽くの頭をはたいた。 「痛い!せっかくセットしてもらったのに!」 「あんた馬鹿?と真田だけどほかは出来るだけ中の良かったグループで分けてるでしょ?」 「あたしだけわざとハブったの!?」 「ほんと馬鹿!ちょっとはない頭絞って考えなさいよ!」 「どういう意味!?」 声を抑えながらも語尾を荒くすれば、花嫁の周囲にいた女の子たちはみんなけらけらと笑い、「相変わらずねぇ」と一人ひとりの頭をまるで小さな妹にするように撫でる。 「だからはいつまでたっても彼氏がいないのよ」 「だいたい鈍感すぎ」 「あたしらがどんなに心配したか」 「今日はあたしじゃなくてあっちの心配しようよ?間違っても別れたりしないようにねって!」 会話にどういう意味があるのか図りかねるはなんとか話題を花嫁たちに向けようとするが、四方から向けられる気味の悪いニヤニヤ笑顔、もといみんなの生暖かい視線に耐えられず「また後で!」と暴れながらその手から逃れ、自分の席に帰ることにした。 テーブルには半数ほどしか人は残っておらず、渦中の幸村は花婿のほうと話しこんでいる。 何故自分が真田幸村と同じテーブルなのか? いまいち意味がわからなかったが、はグラスに注がれたシャンパンと一緒にその疑問を飲み込んで押し流すことにした。 テーブル席の友人らと話している間に、再びスポットが落ちる。 どうやらお色直しで再登場らしい。席に着きなおしたの隣には、すでに幸村が座っていた。 BGMと一緒に再登場した二人は黒と紅で纏められたドレスとタキシードに身を包んでいた。 上品さと情熱さが溢れるゴシック調のドレスに、はまたもほうとため息を零す。真っ赤なドレスを飾る黒曜石の飾り、そうして幸せそうに腕を組む二人。 「いいなぁ・・・」 「うむ、あのドレスは良いかも知れぬ」 「幸村くんさぁ、挙式の相談は彼女としなくちゃ」 確かに幸村君赤色似合うけど。 そういえば幸村が二、三度目を瞬かせて、証明が落ちた室内でもわかるほどはっきり笑みを浮かべた。 「では殿は赤色はいかがか?」 「あたし?あたしは別に赤は嫌いじゃないかなぁ。普段着にはちょっと気後れするけど、結婚式なら派手にしたいじゃん?」 「なるほど」 「だからね、挙式の相談は彼女としなってば」 うむうむ、と深く頷き今にもメモを取り出しそうな幸村に注意すれば、幸村はさっとの目の前に小さな小箱を差し出した。 きょとんと目を丸くして、瞬きを繰り返せばばっちりマスカラの睫の音まで聞こえるようだった。 幸村はのその細腕を取ってゆっくりと笑みを深めて笑う。 「殿、某と結婚を前提にした付き合いをしてくださらぬか?」 「・・・・え、えぇ!?」 開いた小箱の中は美しいリング。たぶんプラチナ。まぶしいダイアモンド。 処理しきれない情報に悲鳴を上げながら飛び上がれば、声を聞きつけた花嫁がに向かって何か投げてよこした。 思わず受け取ったそれは、赤バラと黒バラと、細やかな刺繍のレースで作られたブーケ。鮮やかなほどの、ブーケトスだった。 「今日の席順の意味、わかった?」 「実はグルなんでござる」 しかも全員、と言われて辺りを見回せば、すべてのテーブル席でスタンディングフォーメーションでに向かっておめでとーと祝福を飛ばす。 赤面したまま固まるに向かって、幸村は甘く微笑み細い指にリングを通した。 「高校の頃から、ずっとこうするのを夢見ていた」 「あ・・・・え、えと・・・」 「某の花嫁になってくだされ」 飛躍しすぎる話と展開に、目を白黒とさせるだったが、それもいいかもしれないと、固まる思考の端ではっきりとそう思ったことに気付いてしまったのだった。 |