act,1 相変わらず酷い男だと思う。 自分勝手で自由気まま、自己中心的な俺様男にはうんざりとため息を吐く。意識せずとも体がイラつき、組んだ腕では右手の人差し指が忙しなくリズムを刻んでいた。それを見てしまったブライダルプランナーは顔を青くして汗を拭き、たった一つの扉ととの間に何度も視線を泳がせた。いつまでも開く気配のない扉にプランナーもまたため息を零し、腕時計をちらりと盗み見た。 「I am sorry to be late!」 「政宗!なにしてたのよ!?」 「そうカッカすんなよ。ちょっと遅れただけだろ?」 「ちょっと!?一時間よ一時間!!連絡もなしに遅れるなんてっ!」 「だから悪かったって。今日は衣装合わせだろ?さっさとしようぜ」 「政宗っ!」 付き合って頃からだがやはり政宗はマイペースで自己中心的、こんな時ほど政宗が世界は自分を中心に回っているんだと思う時はない。 思いっきりため息を吐けば、その場の空気を和ませようとウェディングプランナーが何か言っていたが、残念ながらの耳には何一つとしてまったく入ってこなかった。 試着室に通され、白いドレスを一つ一つ吟味していく。 政宗は別室に通され、穏やかなBGMが流れる室内では純白のドレスたち一つ一つを触れて回った。 大体の形はもう決めいているが、細部までデザインが違うのだからしっかり選ばなくてはもったいない。 そのほかにもヴェールやティアラも数多くあるのだ。これを真剣に決めずにしては結婚式には挑めるはずがない。しばらく眺めた後、は肩から背中を大きく出した、スカートにレースをふんだんに使ってボリュームのあるドレスを試着することにした。セットのヴェールも文句なしにかわいい。スタッフに声をかけ試着の了承をもらったは、手早くそれを着込むことにした。 髪はひとまずアップにしてヴェールをかぶる。細やかな刺繍の入ったヴェールにはラメもついていてまるでダイヤを飾られたようで気分も良くなってしまう。最初の政宗の暴挙などもう忘れて、鏡の前でひらりと体を回転させたは豪奢に揺れるドレスのスカートにますます笑みを浮かべた。 そうしているうちに別室からの扉が開けられ、何事かとそちらを見れば、すでにタキシードを着込んだ政宗が立っていた。 「・・・」 「ah?格好良すぎて言葉もねぇってか?」 「ち、違うわよ!」 黒の燕尾にのシルクのシャツ。パンツはしっかりとしたストライプに品のある革靴。そうして胸に刺された一輪の青バラ。 悔しいけれど、絵のように美しい政宗の姿に見惚れたのは事実だった。 「馬子にも衣装ね」 「言うじゃねぇか。お前は良く似合ってるぜ?」 「褒めたって遅刻は許さないわよ?」 「堅いこというなよhoney」 そうしての前に立つ政宗は笑みを深くする。 顔を隠すヴェールを優しく解いた後、二人にしか聞こえない声で「綺麗だ」と零した。 「なぁ、最近は怒らせてばっかだけど、お前は俺が幸せにしてやるから、しっかり着いて来いよ?指輪は、当日まで我慢しな」 言葉と共に首元に回されたのは、一緒に選んだ指輪のデザインと同じネックレスだった。 ヴェールのラメが霞むその輝きはまさしく本物で、は驚いたままネックレスと政宗を見比べた。 「指輪に合わせて作らせたら遅くなっちまってな。これなら、遅刻の件は許してくれるよな?」 「・・・ばか」 こんな言葉までもが高慢で高飛車で、思わず笑ってしまうが、それでもああ。 綺麗に微笑む政宗を見つめながら、やっぱり自分は政宗に幸せにしてもらいたいんだと、胸の内から溢れれる物が止められなくて、はうっすら目じりに涙を為ながら政宗の肩口に額を当てた。 「絶対幸せにしなきゃ、承知しないんだからね」 「ok my dear.I make it happy throughout the life.」 流れるような美しい英語。 我侭で自分勝手で自分本位で手に負えないような自己中心的な男だけど、それを差し引いても余りあるプラスを残すこの優しさと愛おしさが好きで、は政宗歩む未来が、輝かしいことを確信した。 |