act,3 「佐助ぇ!あれとってあれ!」 「もーリラックマとか別に好きじゃないでしょ。その場のテンションで欲しいとか言うんじゃないの」 「うわーんけち!じゃあその隣のぷーさんでもいいからさぁ!」 「明らかにぱちもんの顔してんるでしょ!どうしても欲しいならディズニーストアで買ったげるから我慢しなさい」 「うわーん!せっかくのデートなのに佐助がお母さんだよー!」 「ちゃんがやらしてんでしょーか」 ぺちこん、と軽く額をぶたれたは畜生!と女子あるまじき暴言の後に額をさすった。 「嫌でもマジであれは欲しいんですけど」 「はいはい。なぁに?」 の視線の先を目で追えば折り紙の金色で一等賞!と書かれた紙を誇らしげに掲げるゲームソフトだ。ますます女子有るまじきそれに佐助はちょっとげんなりした。これでは一番最初のリラックマがまともとしか言わざるおえない。たとえ部屋においても無意味に邪魔をして幅を取るぬいぐるみだとしても、だ。 「ちょ!あたしんじゃない!あたしんじゃなくて弟にだよ!?」 「うっそだー。どうせ弟の部屋乗っ取ってプレイするかゲームショップで売るかヤフオクで転売するんでしょ」 「佐助ちょっと生っぽい話するんじゃないよ!」 射的屋のおじさんが苦い笑みを浮かべてどうするんだい?とのんびり問いかけてくる。こんな大衆の面前で大手を振ったからには引かれない。 「おじさん!弟のために五百円!」 「はい、弾5発ね」 こん、と目の前に置かれたコルクの弾を睨み、佐助のほうを見る。 だが佐助は猫のように目を細めての勇姿を見守るらしかった。 「ばかばか!佐助のほうが射的とか超うまいじゃん取ってよwiiのソフト!」 「だーめ、たまには自分で努力してごらん」 ひらひらと手を振って放任に徹する佐助には半分涙目になって銃身を構えた。せっかくのお祭りに浴衣デートなのに甘えさせてもくれないのかとぶつぶつ文句を言うが、佐助は涼しい顔でがんばれーと黄色い声援をよこしてくれる。 夏祭りの屋台とはいえ射的の銃は本物のように重い。ぐらぐらと揺れる銃身、足元はおぼつかない下駄。何とか撃った一発目ははるか的外れで屋台のおじさんの失笑が聞こえては思わず半眼でそちらを睨んでしまった。初心者なのだからに罪はないと思いたい。 「ほらほらちゃん落ち着いて、まだ一発目だからさ」 「うーーー!!」 二発目を詰めてもう一度ゲームソフトに向かって標準を定める。周囲に集まった観客たちの冷やかしという名の声援を受けながら放った二発目は、惜しくもソフトの端をかすったのみだった。 「さすけぇぇぇぇぇ!」 「もー真田の旦那みたいなこと言ってないで構えて構えて」 せっかくのデートだというのに一切のデレを見せない佐助にはぎりぎりと歯を食いしばる。ますます女子有るまじきそれなのだが突っ込む人がいないので気にはしない。 三度目、さらに慎重に狙いを定めたはずがまたも大外れ。さすがに泣きそうになるに気づいた佐助は射的の銃が投げられる前にそれを浚うように奪い取った。 「ちゃん、可愛く取って、って言ってごらん?」 「・・・佐助、お願い、とってぇ」 こて、と首を傾げればか可愛らしい少女の出来上がり。たとえ女子有るまじきでも佐助にとってはかわいいかわいい大事な彼女なのだ。誰もが認める可愛らしいおねだりに、にこりと満面の笑みを浮かべた佐助はしなやかに銃身を構え、「後でちゅー一回ね」と囁いた後に引き金を引いた。ぱん、と乾いた発砲音の後に割れるような歓声が巻き起こる。屋台のおじさんの間抜け面を尻目に、は「佐助愛してる!!」と大声で叫んで飛びついてキスを送るのだった。 やれやれとの現金さに佐助は肩をすくめるものの、かわいらしい恋人の抱擁にデレた表情を隠すことはできなかった。 |